同僚が自殺した。

1か月くらい前の事だ。

書くべきか悩んだのだけど、今の思いを書き残すべきだと思ったので書く事にした。

 

・・・その日は徒歩で出社した。

いつもは自転車なのだけど、前日にパンクをして未修理のままだった。

いつものようにコンビニで朝飯を買い、事務所の前に辿り着くと同僚の車が駐車してある。

あれ?今日はここに出社だったかな?とちょっとだけ不思議に思った。

同じ部署の同僚とはいえ、実際に会うのは多くて2週間に1回、少なくて月に1回。

一緒の部署でも殆ど会わないし、付き合いも基本的にはないけども、お互いに社歴は長く、昔は休憩室に常設されていたサムスピで対戦して余裕でボコボコにしてあげた事もある程度には付き合いはあった。

 

入口にある電子ロックを暗証番号を入力して解除。

扉を開けるとアラームが鳴るのでそれを警備カードで解除をするのが俺の毎日の最初の仕事。

癖でポケットに手を入れてカードを取り出そうとするけども、今日は先に同僚がいるので警報は鳴らない事を思い出す。

ポケットにカードを入れつつ扉を開ける。

すると少し奥に同僚がいるのに気が付いたので挨拶を、

おはようございます、今日はどうしたんですか? つーかなんでそこに立ってる?タバコ?え?え?え?え?え?え?え?え・・・・・・・

頭に浮かんだ言葉は一言も出なかった。

おはようと発しようと考えたと同時に、同僚は首を吊って死んでいるであろう事を即座に理解したからだ。

 

首に掛かった藍色の延長コードは天井のフレームから通していて、足元には倉庫から引っ張り出したスカイブルーのビニールシート、後ろには錆びたパイプイスがあり、ここから飛び降りたのだろう。

その横にはA4用紙に2行しかない遺書と思われる紙と財布にスマホ、鞄が置かれている。

同僚を見ると、顔色は土色、口から青紫色の何か出ているのは多分舌なのだろうか、大きく肥大してまるでドリフの西遊記に出てくるいかりや長介人形ソックリだ。

いや、人形というよりもまるで蝋人形を見ているようで、ドッキリを仕掛けられているのではないかと思うくらいに現実感がない。

特に匂いも感じず、よく糞尿をまき散らすというけどもそんな様子はない。

多分それを見据えて下にブルーシートを引いたんだろう、こんな思いやりがあるならまずはそんな所からぶら下がってんじゃねぇよ。

そんな事を考えつつ、我ながら色々不謹慎つーかなんというかなんというか・・・と思いつつ、こんな状態なのに動いたらちょっと怖いな・・・と、恐る恐る同僚を触り、ここで死んでいる事を理解した。

「な”っん!!!!!」ここで初めて声が出る。

ワイシャツ越しに触れた同僚の腕は本当に冷たかった。

 

事務所から出て駐車場の縁石に座り、上司に連絡し説明をする。

もう立つ気力はなかった。

そして消防、警察へと連絡をする。

消防では首を吊っている事を説明したら「下ろせますか?」とか言われて驚く・・・あんなの下ろせるわけねぇだろ、クソが。

 

消防が到達し、事情聴取というか状況説明をする。

その後警察が来て、消防と同じような簡単な事情聴取を受ける。

そして警備履歴や監視カメラ、タイムカード、本人の直筆などの資料を提出。

次々に来る上長や役員達。

まさかまだそのままの状態だとは思わずに入館して、驚愕の顔を見せるのが少し面白い。

1時間以上過ぎ、消防が下して救急車で運ぶのかと思いきや、完全に死んでいるので鑑識の対応となるとの事でそのまま。

その後鑑識が行われ、同僚が下されて全てが終わったのは発見から3時間後だった。

 

 

なんで同僚が自殺をしたのかはわからない。

会社か、家族か、それとも金銭的な部分なんかよくわからない。

自分が見たのはA4に書かれた2行の謝罪の言葉だけだ。

死ぬまで追い込まれたのに怨みの言葉はなく、最後まで謝罪の言葉か。

 

とはいえ、会社で吊ったのだからやっぱり会社だよなぁ・・・

だからといって普段の勤務地ではなく、俺の拠点っつーのはなんだかなぁ・・・俺が100%最初に発見することは知っていたはずだし、俺のせいなのかとか、俺にどうにかして欲しかったのか、何か出来る事があったのではないかとか、いろいろ考えたくないけど考えてしまう・・・

 

今回の件で程々にトラウマを植え付けられた。

フラッシュバックするような事もないし、衝撃度でいえば女に振られた時とか、尊敬していた先輩が夜逃げした事とか、その先輩の事を相談した別の先輩に大金をだまし取られた事とか、ペットが死んだときの方が何倍も衝撃を受けたのだけど、それとはまったく異質のダメージを受けたようだ。

 

まず部屋に入り、先に誰かがいると敏感にドキッとするようになった。

思わずコンマ何秒か凝視してしまう。

なんだか物凄く臆病になっている気がする。

今、部屋に入ったところを驚かすようなドッキリを仕掛けられたら、相手を殴って血塗れにしてしまうくらいには間違いなく怒るだろう。

寛大に笑える余裕は今はない。

 

そして、死という言葉をなんとなく使いにくくなった。

別に死に直面したことは今回だけではない、先日絶縁していた父親の遺体を見たばかりだし、その時は昔は立川談志ぽい風貌だったくせに死に顔は歌丸師匠っぽいなw程度だったし、家の目の前でトラックに轢かれて事故死した人も見たことあるし、知っている人が自殺したという話も聞いたことはあるけども、ふーんそうなんだねーぐらいだったし。

よく他部署からのクソみたいな質問メールや謝罪メールが届くたびに「なんなんだよ死ねよ」と心でつぶやいていたけども、もうそれもあれから発したことはない、発しようと思った瞬間にピタッと停止するくらいに。

 

誰でも1度や2度や3度や4度や5度くらいは死にたいと思ったことはあると思う。

自分も色々めんどくさくなってそう思うことは超絶ある。

年間3万人も自殺者がいるんだからみんな誰もが多少は考える事なんだと思う。

年間3万人の第一発見者がいて、自分もその一人になり、全国には自分と同じような経験をした人が3万人いて、10年で30万人とか凄いな日本。

なーんだ、そんなにいるなら大したことはないんだなぁ、なんて思ったりもする。

 

別に自殺なんてするなとかいうつもりもないし、死ぬならもっと遠くで死ねというつもりもないし、会社が絶対に原因だとかいうつもりもないし、俺は悪くないというつもりもない。

 ただ、こんな事があったけども私は元気ですーってどこの魔女宅配だよって冷静にセルフツッコミをするくらいはぼちぼち元気にしてますよと言いたかっただけです。 

 

なんなんだよほんとに。